場面分析演習・進捗状況(教員用メモ)

本日ゼミで講読したのは、会話分析についてのごくごく基本的な紹介論文である、以下の二本。

・西阪仰、1995、「順番取りシステム再訪」『言語』24(7)、pp.100-105、大修館書店
・西阪仰、1995、「隣接関係と隣接ペア」、『言語』24(10)、pp.133-139、大修館書店

しかし「順番取りシステム再訪」に関してみんなで議論をしているだけで、おおかたの時間が来てしまった。時間についてはまだまだ予想ができずにいる(反省)。この論文の文中で学生さんに理解がしづらいところについて今後のためにメモしておこう。


1)(権利)と「義務」という語の指している効力の範囲について

この語が持つ語感が強すぎて、順番取りの規則に対して「義務」という語が結びついていることがぴんとこないようだ。会話をしているときに、そんな「義務」を意識して会話をするわけではないので、語感が分からないのは仕方がないことではある。(EMCA特有のルール観についての説明が必要なのは確かだけど、それは論文を読んでいくうちに自分で発見してもらうほうが楽しいと思うのでまだ説明しない)


2)「会話」という語が指している現象について

例えば「日常会話」として友人とのおしゃべりや制度的な会話としての授業をイメージするのはいいが、そこでなされる多様な活動(例えば友人とのおしゃべりにおける冗談とか)がこの論文だけでは説明できないことへの疑問が生じてしまうことがある。

月刊『言語』の読者とは違って、たいがいの学生は「順番取り」などに最初から関心があるはずはないので、会話分析で言うところの会話とは何か、そこで行なわれうる様々な活動とは何か、そして、順番取りシステムとはそうしたもののどの部分を規定しているのか、についてあらかじめ話しておいたほうがいいと思われる。